さっそく大問題の登場ですね! これまで、労働法学者と経済学者とが雇用・労働にかかわる課題について検討した本は何冊もありますが、いずれについても整理解雇は中心的なテーマでした。
(安藤さんも参加された「格差社会と雇用法制ー法と経済学で考える」(福井秀夫=大竹文雄編著、日本評論社)では、安藤さんはじめ数人の経済学者が論じておられますし、「解雇規制の法と経済ー労使の合意形成メカニズムとしての解雇規制」(神林龍編著、日本評論社))は全体が整理解雇にかかわっていると言ってもよいくらいです)
さて、安藤さんのご指摘を読み、まず思い知らされたのは、法的課題について実によく勉強されていることです。私の経済学に対する素養が、それに釣り合うくらいあればよいのですが・・・
それでは、整理解雇の法的意味について、安藤さんのご理解に特に修正すべき個所はないので、例によって脚注をつけます。
まず解雇は、法的に表現すると、「労働契約という契約を、使用者側から一方的に解約すること」です。解雇に対して、逆に「労働契約を労働者側から一方的に解約」するのが「辞職」です。そして、両者が合意して労働契約を解消するのが「合意解約」で、一般の「退職」がこれにあたります。(ここでは、期間を定めた有期労働契約のことは取り上げないこととします。ちなみに、当初定めた雇用期間が満了したのでそこで労働契約関係が終わる、という場合は「解雇」とは言いません。)
解雇と辞職は、民法上はどちらも対等に「自由」でしたが、労使には本質的な不均衡があるので、解雇については法令や判例でいろいろな制約が課されてきました。辞職は、民法の原則が今も生きていて、2週間の予告期間さえ置けば全く自由です。しかし解雇は、現在では労働契約法16条が、客観的に合理的な理由がなく、社会的に相当と認められない場合は無効であるとしています。
つぎに、解雇が通常、普通解雇と懲戒解雇と整理解雇に分けられること、及びそれぞれの内容については、安藤さんの整理の通りでまちがいありません。整理の仕方としては、「労働者側に原因がある解雇」と「使用者側に原因のある解雇」に分けて、前者に普通解雇と懲戒解雇、後者に整理解雇をあてることもありますね。
そして、整理解雇が大問題となるのは、「なぜ解雇するのか」の理由が、労働者になく使用者にあるためです。たとえば、ある労働者が、サボってばかりで与えられた仕事が全く進まない、という理由で解雇された場合は、明らかに労働者側に理由があるので、その解雇が上記労契法16条に照らして有効かどうかを判断するには、「その仕事のためだけに雇用するという契約だった」という場合を除いて、サボったことについて考慮すべき余地はないかとか、他の仕事に回す余地はなかったのかとか、会社も十分に諭して反省の機会を与えたのかとかいったことが検討されます。
しかし、整理解雇は会社の都合によって(多くの場合は経営上の危機)解雇するので、身に覚えのない労働者にとってはあまりにも不当だ、と受け止められます。労働者側に原因がある解雇でさえ、訴訟になればいろいろな事情が考慮されて「解雇までは認められない」という判断が下されることも多いのですから、何も悪いことをしていない労働者でも解雇される整理解雇は、全く認められる余地はない、ということになりそうです。ところが、そう言って整理解雇を認めないと、会社自体がつぶれてしまって 全ての従業員が路頭に迷うということになりかねない。
このような深刻な事情があるので、整理解雇については、上記労契法16条の判断基準をそのまま使うだけでは有益な解決がつかないのです。そこで、どのような合理的なルールがあるべきかについて、裁判所も学者も大変な苦労をしてきました。
・・・以上脚注でした。次はいよいよ「論争」になるかもしれませんね! 乞ご期待(?)
主流派経済学者の間では、解雇規制についての見解はほぼ一致しています。
返信削除【伊藤元重】
日本の未来を考える、企業任せの雇用に転換点
http://megalodon.jp/2010-0408-2142-14/sankei.jp.msn.com/economy/business/090307/biz0903070258002-n1.htm
【大竹文雄】
日本社会はなぜ「解雇規制緩和論」を受け入れようとしないのか
http://diamond.jp/articles/-/8098
【竹中平蔵】
"日本版オランダ革命"に取り組め
http://www.youtube.com/watch?v=K6V6gcI4x8g
竹中平蔵のポリシー・スクール、雇用は健全な三権分立から
http://www.jcer.or.jp/column/takenaka/index124.html
【八代尚宏】
解雇ルールを法制化した労働市場が必要
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/cover/bigbang/070905_5th/
日本的雇用慣行の再評価と労働市場規制
http://www.jacd.jp/news/column/100513_post-49.html
主流経済学者たちの解雇規制に関する見解はほぼ一致しています。
返信削除【伊藤元重】
日本の未来を考える、企業任せの雇用に転換点
http://megalodon.jp/2010-0408-2142-14/sankei.jp.msn.com/economy/business/090307/biz0903070258002-n1.htm
【大竹文雄】
日本社会はなぜ「解雇規制緩和論」を受け入れようとしないのか
http://diamond.jp/articles/-/8098
【竹中平蔵】
"日本版オランダ革命"に取り組め
http://www.youtube.com/watch?v=K6V6gcI4x8g
竹中平蔵のポリシー・スクール、雇用は健全な三権分立から
http://www.jcer.or.jp/column/takenaka/index124.html
【八代尚宏】
日本的雇用慣行の再評価と労働市場規制
http://www.jacd.jp/news/column/100513_post-49.html
解雇ルールを法制化した労働市場が必要
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/cover/bigbang/070905_5th/
スパム扱いされていたコメントが2件あったので,とりあえず解除しました。内容が二つとも同じなのですが,これらは同じ方からの投稿でしょうか?そうであれば重複している後者を削除したいと思います。
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